
タバコの煙は、4,000種類以上の化学物質と250種類以上の毒物もしくは発がん性物質を含んでいます。しかも、これらの有害物質は喫煙者のみならず、周囲の人の健康にも悪影響を及ぼします。一方、ニコチンは発がん性物質ではないとされていますが、喫煙習慣をなかなか断ち切れない理由となる「ニコチン依存症」の形成に大きな役割を果たします。
タバコが健康に悪いことは周知の事実ですが、実際、イギリスの研究結果では喫煙により寿命が10年間も短縮することが報告されています。また、最近の試算によると、わが国でタバコが原因とされる死亡者数は、2000年には11万4,000人(男性9万人、女性2万4,000人)にも達しています。20年間で約2倍の人数に増加したことになり、今後もこの傾向は続くと予想されています。しかし、禁煙すれば生命延長効果があらわれます。その効果は禁煙開始が早いほど高くなり、35~44歳で禁煙した場合の生存率は非喫煙者とほぼ同レベルとなるとの報告があります。
タバコによって引き起こされる病気としては肺がんや循環器疾患(高血圧)が有名ですが、それ以外に喫煙は胃潰瘍や糖尿病、不妊、骨粗しょう症、白内障などを含む、全身の様々な疾患リスクを高めます。また、外科手術の予後にも影響します。
多くの女性は、妊娠中の喫煙を胎児に悪影響があるものとして認識しています。ただし、漠然とした印象をもつにすぎず、具体的な内容を知る人は多くはないでしょう。また、不妊とタバコの関係については、妊孕性が低下するというリスクがあるにもかかわらず、あまり意識されていないようです。喫煙のリスクについての正しい情報を提供することは、女性にとって大きなメリットとなります。
妊孕性を低下させる喫煙
喫煙は女性の妊孕性を低下させます。喫煙する女性では、非喫煙女性に比べて不妊症のリスクが高いこと、また妊娠するまでの期間が長くなることが知られています。避妊を中止した女性4,104例を対象にした調査では、5年以上妊娠しない率は、1日21本以上喫煙する女性では10.7%と、非喫煙女性における5.4%の約2倍であることが報告されています 。また、米国において喫煙と子宮外妊娠の関係を検討した研究では、喫煙女性では非喫煙女性に比べて子宮外妊娠のリスクが2.5倍に高まることが報告されています。特に1日30本以上喫煙するヘビースモーカーでは、リスクは5.0倍にも上昇してしまいます。
喫煙により女性の妊孕性が低下する機序は十分には明らかとなっていないものの、卵母細胞の発育やエストロゲン合成を阻害することが知られています。
多岐にわたる母体・胎児への悪影響
妊婦が喫煙することで母体・胎児に及ぼす悪影響は下のとおり、多岐にわたります。
【喫煙が胎児に及ぼす影響】
・胎児発育遅延
・早産
・胎盤に関連した合併症(常位胎盤早期剥離、前置胎盤)
・前期破水・早期破水
・周産期死亡
・流産増加
一般に喫煙妊婦の児は、非喫煙妊婦の児に比べて出生体重が軽いことが知られています。胎児発育が遅延する理由として、タバコの煙に含まれる一酸化炭素による低酸素状態、ニコチンによる臍帯や子宮血管の収縮などが指摘されています。また、喫煙者では早産率も高いため、胎児発育遅延と重なり低出生体重児の増加を招きます。厚労省が実施した平成12年乳幼児身体発育報告書によると、1990年に5.6%だった妊婦の喫煙率は、10年後の2000年には10.0%と倍増しています。この数値だけをみると、妊婦は意外にタバコの害を軽視しているようにも思えます。
妊娠の有無にかかわらず、禁煙治療の勧めを
妊娠していない女性が喫煙していても、周囲は強く禁煙を勧めないでしょう。しかし、喫煙は女性の妊孕性を低下させるリスクファクターです。妊婦はもちろん、妊娠前の女性にも、禁煙治療が必要です。
タバコは美容とも無関係ではありません。喫煙はシワのリスクファクターであるほか、口唇の乾燥や歯・歯肉の着色などを引き起こします。そのため、一般的にその顔貌は「スモーカーズフェイス」とよばれ、実際の年齢よりも老けた印象を与えます。
美容の大敵、タバコがもたらす 「スモーカーズフェイス」
喫煙により皮膚の血流は阻害されます。さらに、喫煙すると活性酸素が産生されるため、コラーゲン線維の合成阻害や弾性線維の破壊が促進され、皮膚の弾性が低下してシワが増加します。皮膚だけでなく、喫煙は頭髪や口唇、歯肉などにも下表のような影響を及ぼす美容の大敵です。
【喫煙による美容上の問題】
・皮膚弾性低下
・ シワ増加
・ 頭髪の変化(白髪、脱毛)
・ 口唇の乾燥
・ 歯および歯肉の着色
・ 口臭
・ 声の変化
・ 男性型脱毛
喫煙はシワ形成のリスクファクター 1日20本の喫煙は加齢約10年に相当
喫煙は、シワ形成の独立したリスクファクターであることが知られており、1日20本の喫煙は約10年間の加齢に相当するシワを形成するとの報告もあります。また、わが国で実施された研究では、シワ形成のリスクは喫煙と日光曝露が重なることで、日光曝露の少ない非喫煙者の11.4倍に高まることが報告されています。








